地震波の伝わり

地震波は断層面のすべり破壊で発生し、地盤の中を伝わり、地表面に到達します。途中で地盤が軟らかくなったりすると、その境界で地震波の伝わり方や大きさが変化します。簡単な地盤構造ではこのような伝わり方を式で表現できるのですが、式だけで波の伝わりを実感することは難しいものです。動かない教科書の図だけでは、なかなかイメージを掴むことができません。ここでは、いくつかのケースについて地盤中を伝わる地震波の様子をアニメーションで紹介します。

均質地盤へのパルス状S波の鉛直入射
均質な地盤に下方から単一のパルスを有するS波が鉛直入射する様子です。地中での振幅を0.5とすると、地表面で振幅が1となり2倍になることが分かります。最もシンプルなケースですが、地表面と言うのは重要でかつ最も変化の大きな境界条件です。
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2層地盤へのパルス状S波の鉛直入射
硬い地盤の上に軟らかい地盤が堆積しているところに、下方から単一のパルスを有するS波が入射します。軟らかい地盤の中では、地震波がゆっくりと進み、波の長さが小さくなりますが、振幅は大きくなります。地層境界で地震波が軟らかい地盤に透過して振幅が大きくなる様子や、反射する様子が分かります。逆に軟らかい地盤から硬い地盤にぶつかるときに、反射波の振幅の方向が逆転しています。
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均質地盤への定常S波の鉛直入射
今度は均質な地盤に下方から、同じ振幅、周期を持つS波が繰り返し入射する様子です。最後はヘビのような動きとなっています。地表面で振幅が大きくなるのは同じですが、地中は全く揺れていない点も見られます。
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均質地盤へのパルス状SH波の鉛直入射
今まで紹介したS波入射について振幅の方向を変えています。前後にはみ出すような揺れ方になっています。基本的には方向が違うだけで一番最初のケースと同じです。
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均質地盤へのパルス状SH波の斜め入射
前後にはみ出すような揺れの方向に振幅を持つS波(SH波)が、下方の斜め方向から入射したときの様子です。入射角は30゜です。今までは地表で同時に大きな振幅が生じていましたが、この場合は振幅の大きな領域が横方向に走るような形になります。また地表で同じSH波が反射する様子が見られます。上下方向には動きません。
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均質地盤へのパルス状SV波の斜め入射
次にS波の振幅が上下方向に突き出るように(SV波)斜め方向から入射したときの様子です。この場合は、水平方向だけではなく、上下方向にも動かしています。また地表面で反射することにより、SV波だけではなくP波も現れますので、地盤は大変複雑な動きになります。鉛直入射のときはSV波とSH波は同じように伝播しますが、斜め入射の場合は、両者で異なる動きとなることが分かります。
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3層地盤へのパルス状SH波の斜め入射
3層地盤に下からSH波が斜め45゜から入射したときの様子です。地表に近づくほど地盤が軟らかくなります。これは上下方向の動きはありません。軟らかい地盤では地震波がゆっくりと進んでいます。地層境界で地震波が透過、反射するのは同じですが、地盤が軟らかいほど波の進む角度が「立って」きて、地表近くでは鉛直に近い角度で地震波が伝播する様子が分かります。
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片閉じの盆地地盤へのパルス状SV波の鉛直入射
左側が段差状となっている地盤に下からSV波が入射したときの様子です。今までの水平成層地盤とは異なり、段差位置で水平・上下の動きを伴う表面波(レイリー波)が発生し、盆地の端部で波の振幅が大きくなっている様子や、右方向に表面波がゆっくりと伝わり、右側の地表がいつまでも揺れている様子が分かります。
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片閉じの盆地地盤へのパルス状SH波の鉛直入射
左側が段差状となっている地盤に下からSH波が入射したときの様子です。SV波入射時と似ていますが、段差位置で前後にはみ出すような揺れとなる表面波(ラブ波)が発生します。この場合、上下方向の動きはありません。これらの表面波が、平野内にある大都市部で長い継続時間を発生させる長周期地震動の原因となっています。
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